高気圧治療部門
臨床工学技士業務指針の見直し
名古屋大学医学部附属病院 高気圧治療部
○西山博司
高気圧酸素治療分野における臨床工学技士は、臨床工学技士法および臨床工学技士業務指針と、法律ではないが高気圧酸素治療を安全に行うために日本高気圧環境医学会が制定した「高気圧酸素治療の安全基準」を遵守して治療を行っている。しかし、その業務指針や安全基準には、装置の火災事故防止や治療を安全に行う上で最も重要な業務の一つである患者の所持品点検を、装置の操作を行う技士に点検を行わせる明確な規定がない。業務指針には高気圧治療業務E特記事項の第2.項で「患者等の変圧に対する準備危険防止のための身体チェックは医師が行う。」とある。また、安全基準には、安全基準第30条から第31条にかけて規定されているが、その内容は全て「管理医が」とあり、操作する技士については何も規定されていない。このことは患者の所持品点検は、医師しかできないとも解釈できる。しかし、1996年2月に山梨県で起きた装置火災事故例を挙げれば、所轄の山梨県警は、装置火災は患者が装置内へ持ち込んだ化学カイロが原因と断定し、操作していた技士を治療前の患者の安全点検を怠ったとして1997年2月、業務上過失致死傷容疑で書類送検した。また1998年1月に甲府地検は被疑者死亡で不起訴処分としたと山梨日日新聞は報道している。このことから業務指針および安全基準には患者の所持品点検を行う規定がなされていないにも係わらず、一旦、事故を起こせば司法の判断に委ねることになる。また、わが国の医療現場を見ると患者の所持品点検は技士任せにする病院が多い、このことからも現状のままの規定では責任の所在が曖昧である。そのためにも「業務指針の高気圧治療業務」E特記事項2.「患者等の変圧に対する準備危険防止のための身体チェックは医師が行う」をE特記事項2.「患者等の変圧に対する準備危険防止のための身体チェックは医師が行う。ただし、患者の持ち物点検については、医師の指示のもとに技士が行うことができる。」と追加し、技士が患者の所持品点検ができるように業務指針の見直しを提案する。